DNA鑑定 格段の進化

同一型 4兆7000億人に1人以下  

    <讀賣新聞 2009年6月28日(日) より全文掲載 (写真・図は未掲載)>

 栃木県足利市で1990年に女児が殺害された「足利事件」。

菅家利和さんを18年前に有罪に追い込んだのも、今回再審請求を認める根拠となったのも、DNA鑑定だった。

かっての技術と、現在の鑑定技術は、どこが違うのだろうか。(長谷川聖治)

 人間の細胞の核の中には、23対の染色体がある。

この染色体の中に、折り畳まれた状態で収納されているのが、DNA(デオキシリボ核酸)だ。

生命活動を担う様々なたんぱく質をつくる「遺伝子」の情報を、親から子へと伝える役割を受け持つ。

 DNAは、4種類の化学物質(塩基)-A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)-が、二重らせん状に並んだ構造をしている。
その並び方はどの人もほとんど同じだが、人によって異なる部分もある。

 科学者が目をつけたのは、遺伝子の情報と関係のない領域にある、「GTATGC」 「AGAT」などのパターンが繰り返される配列。

繰り返し回数の個人差が大きいのだ。

その差を比べるのがDNA鑑定で、この原理は、18年前も今も変わらない。

 足利事件の翌年の91年、警察庁科学警察研究所が用いたのは「MCT118法」だった。

1番染色体のMCT118という部位に現れる、16個の塩基配列の繰り返し回数を調べてDNA型を判定する方法で、
女児のシャツについていた犯人のものとみられる体液の型と、菅家さんの型が一致したとされる。

MCT118法で調べるのは1番染色体だけだが、血液型と組み合わせると、別の人の型と一致する確率は833人に1人とされた。

ところが、研究が進み、DNA型のデータが増えるにつれ、一致する確率は185人に1人、161人に1人と変化していった。

菅家さんの型は、日本人に多いことが、次第にわかってきたのである。

 現在主流のDNA鑑定は、比較的短い塩基配列の繰り返し(STR)の回数を比べるやり方。

MCT118法と違い、1対でなく、13対の染色体で15か所ものSTRを調べる。

同じ型の人がいる確率はずっと低く、4兆7000億人に1人以下になる。

MCT118が目視で型を判定するのに比べ、STRはレーザー光線で測定し、コンピューターが型判定するため、信頼性が高い。

 再審開始決定につながった再鑑定は、大阪医大でSTRを使って行われた。

女児のシャツの体液と菅家さんのDNA型を比べたが、一致していないことが判明した。

 MCT118法だと、DNAがばらばらに断片化している場合は、まとまった量の試料がないと分析できない。

これに対し、STRなら、一滴分の血痕など微量のサンプルでも、DNAを連鎖的に増幅させるPCR法で増やし、分析できる。

 ただ、MCT118法が、当時最も有効な個人識別法の一つだったことは確かだ。

 神奈川歯科大の山田良広教授は、「ABO式血液型判定しかない時代に、高い確率で個人を識別できることに驚いた。

足利事件の問題は、最初のDNA鑑定を絶対視し、疑問が出た時に再鑑定を行わなかった点にある」と指摘する。

 現在も、DNA鑑定は重要証拠になるが、それだけで犯人逮捕に結びつくことはないという。

日本大学歯学部の小室歳信教授は「いくら技術が向上しても、DNA鑑定は証拠の一部に過ぎない」と強調している。


 <日本での採用1989年>

 DNA鑑定は、1985年、英レスター大学のアレック・ジェフリーズ博士が、塩基の繰り返し配列を調べることで個人を識別できると、科学誌「ネイチャー」に発表したのが始まりだ。

指紋のように一人ひとり違う可能性があるとみて、「DNA指紋法」と呼んだ。

しかし、DNAの部位を特定せずに調べる博士の方法は、分析のたびに違う結果が出やすいなどの問題があり、あまり広がらなかった。

 次いで注目されたのが、特定の部位で、十数個の塩基配列が繰り返される回数を調べるやり方。

同じ85年に、米ユタ大学の中村祐輔さん(現東京大医科学研究所教授)らが、識別に使える配列を発見した。

 中村さんらのチームは、遺伝病の原因遺伝子探索に役立つ「DNAマーカー」(DNA上の目印物質)を血眼になって探していた。

当時世界で見つかったマーカーの8割は中村さんらが突き止めたもので、その一つがMCT118だ。

繰り返しの回数を簡単に計算できるため、連邦捜査局(FBI)が「犯罪捜査に使える」と関心を示し、中村さんとの共同研究を始めた。

 89年、米ウイスコンシン大のジム・ウエバー博士は、2~4個の短い塩基配列が繰り返されるパターン(STR)でも個人を識別できることを発見した。

 日本では、ユタ大に派遣された科警研の技官が改良したMCT118によるDNA鑑定法が、89年に採用された。

その後、STRとの併用が始まり、2003年から、9か所のSTRを、2006年からは、15か所のSTRを調べる方法が取り入れられた。

<同カテゴリー過去記事>
司法
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