『美徳の不幸』 『悪徳の栄え』

著・・・ドナチアン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド。18世紀(1740年~1814年)フランスの作家。 通称マルキ・ド・サド(サド侯) 遊興と筆禍のため生涯の大半を獄中ですごし、数々の作品を生む。


・・・・・この村の人たちは、井戸の水よりほかに飲料水はないのよ。

デュランから教わった秘法を用いれば、二日で彼らを毒殺してしまうことができるわ。

村中に大混乱を惹き起す役目を、あたしと女中たちに一任してくださらないこと?」・・・・・

 「ええい! 畜生」と言いました、「ジユリエット、おまえは何たる奇抜な想像力に恵まれてるのだ。

よしよし、おまえの好きなようにやりなさい。

おまえのおかげで零してしまった腎水で、承諾の署名をしてやろう。さあ、やってくれ」言われたとおり実行しました。

四日間で村中の井戸が汚染され、千五百人の人間が埋葬され、生き残った者も極度の苦痛におとしいれられて、

死を望む声さえ聞かれる有様でした。

理由は伝染病ということで、けりがつきました。

田舎医者の無智があたしたちを安全な立場に置き、疑われることさえありませんでした。

こうして、あたしたちは大いに楽しんだ後、この土地を出発しました。


 ごらんのとおり、みなさま、あたしは現在こんなふうな幸福な境遇におります。

そして正直に申しますが、罪悪を熱烈に愛しております。

罪悪のみがあたしの官能を刺戟するので、あたしは人生の最期の瞬間まで、罪悪の原則を公言して行くつもりです。

あらゆる宗教的な恐怖からまぬかれているばかりか、用心深さと財力とによって、自由自在に法網をくぐることだっ

てできるのですもの、いったいどんな神の権力、あるいは人間の権力が、あたしの欲望を拘束することができましょう? 

過去はあたしを勇気づけ、現在はあたしを痺れるような感覚で酔わせます。

そして未来も、ほとんどあたしを怖がらせることはありません。


だから、あたしの人生の残りの部分も、おそらくあたしの青春のあらゆる放埓をはるかに多く上回るものではないか

と思われます。自然が人間を創ったのは、人間が地上のありとあらゆるものを楽しむためにこそでした。

これが自然の鉄則であって、あたしの心の鉄則も永久にこれのみです。

犠牲者にとってはお気の毒さまですが、やむを得ません。それも必要なのです。

奥妙な平衛の法則がなかったならば、宇宙の万物は自滅してしまうでしょうからね。

自然界が維持されるのも、罪悪のみのおかげであれば、美徳に奪われた権利を自然が取り戻すのも、罪悪のみの

おかげです。だからあたしたちも自然に従って、思うさま悪事に没頭すればよいのですわ。

本当はあたしたちが自然に逆らうことだけが、罪と呼ばれるべきなので、こういう罪は自然がけっして赦してはくれ

ますまい。

おお! みなさま、あたしたちはこの原理を信じて行きましょう。

人間のすべての幸福の根源が、この原理の実践のうちに在るのですからね。・・・・・



・・・・・ジュスティーヌの美しい頬を濡らした涙や、その不幸に打ちひしがれた哀切な表情や、生まれつきのおずお

ずした態度や、その顔ぜんたいに拡がったいじらしい美徳のしるしは、ノアルスイユとシャベールの欲求を大いにか

きたてた。彼らはどうあってもこの不幸な娘を、淫靡かつ残忍な気紛れに服従せしめてやろうと思ったものである。・・・・・・・・・・

ジュリエットは言います。

 「あたしは悪事に手を染めて、貴族の妻、大臣の妻まで登りつめたわ。この世で栄えるのは悪人だけよ!」


ジュスティーヌは言います。

「お姉さまが正しいとしたら、わたしはもう生き方を変えますわ」


「いいえジュスティーヌ、それはいけないわ。悪には実りがないのよ。田舎の家に行きましょう。

  平和と幸福の待っている田舎の家へ」

 美徳の行いのみに真の幸福は見いだされる。

 神は地上で迫害を受けた者たちのみに天上にて用意された、偉大なる褒美をお与えになるのだ


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この記事へのコメント

しんちゃん
2009年09月07日 17:57
正論かもさん、今日は。お久しぶりです。お元気そうで何よりです。お互い頑張りましょう!正論かもさんの幸福をお祈りしつつ…。では。
正論かも
2009年09月07日 19:32
しんちゃん さん。お久しぶりです。

しんちゃん さんもお元気そうで嬉しいです。
 
 この小説から取り出した箇所は、殺人などという極端な場面なんですが、悪というものが人の不幸の上に成り立つ場合があるのなら、貧困等で自死する人が居る事は、象徴的なことかも分かりません。 私はそういう風に解釈してこの小説を取り上げました。

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