日中GDP逆転の衝撃~自滅しつつある日本経済

中国経済 対中直接投資  9月は78億9900万ドル

 大前研一氏の 『 ニュースの視点 』   2009/10/23(金)  より全文掲載

▼ 95年頃から日本経済が停滞した理由とは?
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 15日、中国商務省は9月の海外から中国への直接投資額が前年同月に比べ18.9%増の78億9900万ドル(約7060億円)になったと発表しました。

 2カ月連続のプラスで、増加率は8月の7.0%より大幅に拡大しています。
世界経済が底入れしたとの見方が広がり、対中投資が再び活発になり始めています。

 また、中国政府が株式相場対策を相次いで打ち出しており、政府系ファンドが中国工商銀行など国有大手商業銀行3行の株式を買い増す方針を明らかにしています。

 中国が国家ファンドによってPKO(プライス・キーピング・オペレーション)を実施しようとしているのが見て取れます。
 そして、全体的な兆候として中国投資が戻ってきているのは間違いないと私も感じます。

 同時に、中国が200兆円の国家ファンドを使って世界中の企業を買収し始めている実態も明らかになってきています。

 2009年10月26日号のFORTUNE誌のカバーストーリーは、ずばり「CHINA Buys the World」というものでした。

 80年代、日本企業がロックフェラーセンターやコロンビアピクチャーを買収した際には米国では日本についての議論が盛んでしたが、今の中国も同じ道を辿っているようです。

 世界が目を見張るほどの成長を続ける中国、そして米国・日本という3国についてこの十数年間の経済成長の実態を見てみると非常に重要なことに気づかされます。

 私は「日米中のGDPの推移」のグラフを見るたびに、これほど「日本経済の実態」を明らかにし、そして「新しい経済原論」の重要性を物語っているものはないと感じます。

※「日米中のGDPの推移」 チャートを見る
  → http://vil.forcast.jp/c/amh8ag15uksxg2ab

 グラフを見て分かるように、70年代~80年代日米は共に順調にGDPが成長し続けていました。

 しかし、94年頃から「日本だけ」がGDPの成長が止まって横ばいになっているのが分かります。

 そして2003年頃から急成長を見せる中国に、遅くとも来年には追い抜かれることがほぼ間違いない状態です。

 94年頃というと「バブル崩壊によってお金が失われたのだからしょうがない」と考える人もいるでしょうが、それは違います。

 なぜなら、バブルが崩壊した当時でも個人金融資産は、1000兆円を越えていました。
GDP成長が止まってからの十数年の間にも、日本の個人金融資産の残高は増加する傾向にありました。

 だから、決して「お金がなかったから」経済成長が止まったわけではないのです。
ここが非常に重要なポイントです。

 日本のGDPは約500兆円ですから、本来、個人金融資産は500兆円もあれば十分です。

 もしこのバブル崩壊後に増加した金額がマーケットに出てきていれば、おそらく米国と足並みを揃えて経済成長を継続できたと私は思います。

 では、ある意味では過剰とも言える個人金融資産をマーケットに引っ張り出すにはどうすればいいでしょうか? 

拙著「心理経済学」でも述べているように、不況や危機において消費者は身構えています。

 だから、景気後退や財政問題等の先行きが暗いことを想起させるのは逆効果です。
そうではなく、消費者心理をリラックスさせることが重要なのです。

 例えば「今、車を購入してくれた人には重量税や取得税を免除する」
 という対策なら、自動車業界の活性化につながるでしょう。
または 「築30年以上の住宅の建て替えをする場合には税率を優遇する」
 という対策なら、住宅の建て替え需要を喚起できると思います。

 北海道で道路を建設しても沖縄で橋を架けても、「消費心理は刺激されない」ということを政府・役人は理解するべきです。

どうすれば個人消費を活性化できるのか?という視点を持って対策を打つこと、これが最も重要な命題です。

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 ▼ たった1枚のグラフから読み取れることの重要性
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 さらにもう1つ、この十数年間の日本経済の停滞から学ぶべきことは、旧来の「マクロ経済学」は現代の経済において効果を発揮しないということです。

 現代の先進国においては「金利の上げ下げ」や「マネーサプライの増減」によって景気が回復しないことは、日本が証明したと言っても過言ではないと私は思います。

 私に言わせれば、未だに「金利の上げ下げ」や「マネーサプライの増減」によって経済をコントロールしようとするのは、19世紀の時代遅れの経済学者です。

 そして10年遅れで米国が「日本と同じ轍を踏み」始めています。
 
オバマプランで実施しているのは、低金利政策と資金供給量の増加というマクロ経済学の施策です。

 なぜ日本と同じ過ちを犯そうとするのか、私には理解できません。
 米国のGDPも直近では成長が横ばいになってきていますが、これは一時的なものではなく、日本と同じ「間違った道」を歩み始めた証拠だと私は見ています。

 また、「ゼロ金利政策」は銀行の経営体力を回復させるどころか、むしろ逆効果だということにさえ気づいていない人が多すぎます。

 銀行はゼロ金利になると、貸し出し先を積極的に探す努力をしなくなります。
なぜなら「金利0%」で預かっているわけですから、利回り1.5%程の国債でも買っておけば儲かるからです。

 例えば「金利3%」になれば、銀行は4%で貸し出す先を必死に探すでしょうが、その必要はないのです。
実際、この数年間、私は必死になって貸し出し先を探している銀行など見たことがありません。


 このようなことは、「経済理論を鵜呑み」にせず、実際に起きていることを自分の目で見て分析すれば、すぐに気づけることです。

 こうした間違った理論にも基づいていたから、十数年経っても経済が回復しないのです。
政権を担当する立場になった民主党にしても、この事実を全く理解していないと私は思います。

 経済を活性化させる必要があるのに、さらにまた民主党は「増税」や「赤字国債」という方法を採用するというのですから、私には信じられません。

 これまで失敗してきた自民党を批判し、自分たちは違うということを見せられる千載一遇のチャンスが台無しです。

 麻生政権で通過した補正予算約15兆円を見直した結果、予算の執行停止などで約3兆円の財源を確保したと発表したとのことですが、これなども15兆円全てを削減対象とするべきです。

3兆円目標などと定められている時点で、役人に舐められているのだと私は思います。

 最近、私は欧州の人と話をしていて「日本は20年前に世界地図から自然と消えた」という趣旨のことをよく言われます。

 これは的を射た表現だと思います。「日米中のGDPの推移」のグラフから読み取れるように、まさに日本は「自滅」したということです。

 日本復興のシナリオを描くには、「日米中のGDPの推移」から浮かび上がる「日本の実態」を直視し、旧来のマクロ経済学ではなく「新しい経済原論」が機能しているということを理解することが第一歩になると私は考えています。

 このたった一枚のグラフから読み取れることの重要性を感じてもらいたいと思います。

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 この大前研一のメッセージは、10月18日にBBT757chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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この記事へのコメント

しんちゃん
2009年10月26日 06:03
正解かもさん、おはようございます。いかなる経済理論も人間が人間のために作ったものです。人間にとって一番大切なのは何でしょう?色々あるでしょうが、私は「自分の命」だと思います。最近、景気打開のためにさまざまな理論が考えられているのは知ってますが、把握できないものが結構あります。「自分の命」という観点から、やはり「老後」だと思うんです。その辺は北欧を見習うべきものがたくさんあるでしょう。年金だけ(月に十万程度)で暮らしている人が結構います。それを知った中年層は自衛にはしるでしょうし、若者の勤労意欲はどうなるやら…。経済にしても、仕事にしても、所詮は「生きる」ための「道具」に過ぎません。「道具」のために生きると、リストラはじめ人間を無視した残酷な世の中になってしまうのかもしれません。そういういわば青臭い話題をここ数年、いや数十年「ネクラ」だの「オタク」だのと茶化してきたメディアにも問題はあると思います。「人間どう生きるべきか?」若い時、真剣に悩み考えぬき議論する。若者がそうした特権を放棄したのと、日本経済が低迷した時期がほとんど同じというのは単なる偶然でしょうか。有難うございました。
正論かも
2009年10月26日 19:50
しんちゃん さん。 今晩は。

<人間にとって一番大切なのは何でしょう?色々あるでしょうが、私は「自分の命」だと思います。> 私もそう思います。

 私は時々言います。自分は死にたくないのに、戦争に義がある。などとは欺瞞であると。
 
ここ、10年から15年の間に社会が変質してきているのを私も感じます。

以前、見習う国として、北欧を取り上げました。
お手本になる国々
 〝近未来の日本〟の課題 ヒントが北欧に ・・・http://paworld.at.webry.info/200811/article_15.html
 〝近未来の日本〟の課題 (その2)・・・http://paworld.at.webry.info/200812/article_6.html
 〝近未来の日本〟の課題 (その3) ・・・http://paworld.at.webry.info/200812/article_11.html
 〝近未来の日本〟の課題 (その4)・・・http://paworld.at.webry.info/200901/article_2.html
正論かも
2009年10月27日 18:52
上記、戦争の例を出したのは極端でした。
極端な例で示せば、分かり易くなる事もありますが、この場合は当てはまらないようです。
 人は貧困を避けようとします。貧困は嫌なのです。社会の中には普通に働いても、貧困に苦しめられている人がいるようなのです。要するにワーキング・プアーと呼ばれる人達です。 自分は貧困が嫌なのに、それを見て、動かない・思考を変えない・自由競争だから当然だ。というような人の事を言いたかったのです。 
しんちゃん
2009年10月27日 21:51
正論かもさん、今晩は。極端には思いませんでしたよ。「自分が嫌なことを正当化するなかれ」正しい表現かどうか分かりませんが、戦争にしてもワーキングプアの問題にしても、「それは仕方のない現実だ」などと自分自身のことは棚にあげながらの発想に対する苦言のように思えますが。言い換えれば、「自分の問題として物事を考えなきゃダメだよ」と指摘されてるようには受けとめましたが。
しんちゃん
2009年10月27日 21:52
正論かもさん、今晩は。極端には思いませんでしたよ。「自分が嫌なことを正当化するなかれ」正しい表現かどうか分かりませんが、戦争にしてもワーキングプアの問題にしても、「それは仕方のない現実だ」などと自分自身のことは棚にあげながらの発想に対する苦言のように思えますが。言い換えれば、「自分の問題として物事を考えなきゃダメだよ」と指摘されてるようには受けとめましたが。
しんちゃん
2009年10月27日 21:59
コメントがだぶついたようです。

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